こんな人にオススメ
・どんな博物館か知りたい
・漫画「ゴールデンカムイ」を読んでいる
博物館 網走(あばしり)監獄とは
網走監獄は、かつて網走市にあった旧・網走刑務所を、そのまま博物館にした施設です。(現役の網走刑務所と区別するために、"監獄"と呼んでいます。)
重要な建物を移築して、蝋人形などで当時の生活を再現しています。
今回はそんな網走監獄の魅力を紹介していきます。
網走刑務所の歴史
網走監獄をより楽しむために、さっと歴史を解説します。
収監されたのは凶悪犯?
網走刑務所と聞くと、「凶悪犯ばかりがいて、脱獄不可能な監獄」というイメージの人も多いと思います。
ここに収容されるのは”懲役12年以上の囚人”と決まっていたので、あながち間違いではありません。
ですが網走刑務所が出来た1890年は、政治の混乱期でした。
明治政府にとって都合が悪い政治犯も多く服役していたので、一概に凶悪犯とは言えないのではないかと思います。
(明治政府を創った薩摩・長州藩も、もし負けていれば政治犯扱いだったでしょうし)
なぜ北海道に監獄を建てた?
網走に刑務所が建てられた理由は、大きく2つあります。
理由1:刑務所がパンク状態だった
前述したように、当時は政治犯がたくさん収容されたので、全国の刑務所に人が溢れていました。(西郷隆盛が戦った西南戦争で負けた人達とか)
それらを解消するために大規模な刑務所が必要だったので、未開拓地の多い北海道が選ばれました。
理由2:北海道を守るため
当時の北海道にはロシア帝国の脅威が迫っていて、開拓が急務でした。
そこで安価な労働力として囚人を使うことが提案されたのです。
最終的には1200人の囚人が網走刑務所に移送され、整備した街道は合計724kmにもなります。(大阪-東京間で大体500kmなのでスゴイ距離ですね)
脱獄は不可能?
網走刑務所は最新鋭の警備と、周辺は原生林であることから、脱獄は不可能と言われていました。
ですが、昭和の脱獄王と呼ばれた「白鳥 由栄(しらとり よしえ)」が脱獄を成功させます。
この男性はマンガみたいな能力の持ち主で、人生で4度も脱獄しました。
白鳥 由栄の能力
・全身の関節を脱臼させて、頭が入るスペースさえあればどこでも通れる
・超健脚で、1日120km移動できる
間違いなく、マンガキャラですね。
網走刑務所では3回目の脱獄でした。
看守にも警戒されていたので、通常より頑丈な手錠や牢屋に入れられましたが、食事に出されていた味噌汁をかけ続けて腐食させて破壊しました。
漫画「ゴールデンカムイ」にも登場
網走刑務所は、北海道を舞台にした漫画「ゴールデンカムイ」にも登場します。
刑務所が物語の核にもなっていて、先ほど紹介した脱獄王をモデルにした「白石由竹」というキャラもいます。
(実在の人物と違って、かなりのヘタレキャラになっていますが)
作者である野田サトル先生の色紙も刑務所に飾られているので、ファンの人は訪れましょう。
余談ですが、2019年にイギリスの大英博物館で開催された「Manga展」では、ゴールデンカムイのヒロインである「アシリパさん」がメインビジュアルになっていました。
日本人らしい容姿から選ばれたそうですが、たしかにパッと見で日本人と分かる漫画のキャラって、貴重な気がします。
網走監獄の見どころ
それでは網走監獄を見ていきましょう。
正門(赤レンガ門)
かつては受刑者に恐れられた網走刑務所の正門ですが、今では家族連れも通るテーマパークの入り口です。
舎房・中央見張所
受刑者が収容された雑居房がある施設です。
建物に死角がないので、囚人が怪しい動きをしたら、すぐに分かるようになっています。
このような雑居房が226房あります。
写真では分かりづらいですが、格子窓が斜めに付いていて、他の雑居房からは中が見えないようになっています。
受刑者同士のコミュニケーションを防ぐためですね。
食事風景が蝋人形で再現されています。
真冬には暖房を付けても室温がマイナスだったので、鼻が腐る受刑者もいたそうです。
こええ。
浴場
受刑者たちの数少ない娯楽でもある浴場です。
湯船はコンクリート製で、ボイラーでお湯を沸かす近代的なものでした。
建物左上には、蒸気を逃す”湯気抜き”もありますね。
受刑者が交代で入りますが、脱衣から着衣まで15分しか与えられませんでした。
それでも1日に200人程度しか入れなかったので、入浴できるのは月に5回程度です。
出所する受刑者は、前日に1人で入ることが許されたそうで、久しぶりの一人風呂は格別だったでしょうね。
煉瓦造りの独居房
規則に違反した者は、独居房に入れられます。
窓は無く、食事の量も減らされるので、屈強な受刑者にも恐れられました。
それが今では文化財扱いです。
人間は暗闇に3日もいると発狂するらしいですが、実際はどうだったんでしょうね。
二見ヶ岡農場
食糧を生産する農場です。
基本的は自給自足だったので、戦時中でも受刑者は麦飯(麦7割、白米3割)を食べていました。
食事を取り上げなかったのは、反乱防止のためだったと言われています。
たしかに網走の過酷な環境で、ご飯まで奪われたら暴動が起きそうですね。
監獄食を再現
食堂もあって、受刑者たち(蝋人形)とご飯を食べることができます。
ぜんぜん嬉しくないけど。
メニューは当時の食事を再現したものですが、普通に素朴でおいしいです。
(本来は味噌汁じゃなくて番茶のようです。脱獄王が味噌汁を脱獄に使った影響かな?)
せっかくなので食べていきましょう。
博物館の外にある「監獄食堂」でも、同じメニューが楽しめます。
教誨堂(きょうかいどう)
この建物は僧侶や牧師さんを招いて、収容者を精神的・倫理的に援助するために使用されました。
建物は当時の最新技術で造られていて、中には柱がありません。
まるでダンスホールのような大空間を実現してます。
この建物だけ刑務所じゃないみたいです。
釧路地方裁判所 網走支部
裁判所も設置されています。
机や椅子、照明やカーテンは当時のものが展示されています。
入場料と所要時間
入場料は大人1100円です。
所要時間は、合計2〜3時間かなと思います。(無料ツアー1時間+自分で散策1時間+食事30分ぐらい)
公式ホームページには10%OFF券があるので、チケットを買うときに見せましょう。
アクセス
網走駅からはバスで10分ほどです。
車やタクシーで行く場合は、現役の網走刑務所と間違えないようにしましょう。
博物館は、網走監獄です。
最後に
網走監獄は、普通は入ることができない刑務所を体験できる、日本で唯一の施設です。
(元・刑務所を改築した施設とかは他にもありますが)
建物は大正ロマンに溢れてますし、北海道の歴史においても重要な場所です。
知床半島に行く人は通り道になるはずなので、合わせて訪れましょう。